生活動力とは?

生活とは、液体や気体のように柔らかな動体です。人口動態や経済の浮沈、技術革新など、様々な時代のインパクトを受け、常に変化を繰り返していきます。人は社会的インパクトへの適応性と弾力性を持った生き物です。変化する環境の中で、自らの意志と欲求により暮らしを改編していきます。生活総研では、こうした次の生活を形づくっていくダイナミックスを『生活動力』と呼び、毎年、年初にその発表と提言活動を行っています。

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生活総研
生活動力研究ブログ

叫びの欲求

私が気になっているのは、「叫び」です。日本人の叫びの欲求が増大している。生活総研の研究員として様々な場所にタウンウォッチングに行き、調査を分析している中で抱くようになった仮説です。泣き、叫び、喚きたい。自分の声や感情を思いきり発したい。そんな欲求が今、生活者の中で高まりつつあると感じています。

記事を書いている人:生活総研・酒井

このブログ自体も(どれだけの人に届くか分かりませんが)、一種の叫びなのです。

2013. 07. 25. THU

ネットからリアルに飛び火した炎上

日本人の叫びの欲求が増大しているのではないか。そう私が思うようになったきっかけは、東京新宿区の大久保周辺で行われているデモを取材した時です。この街では、今年に入ってから外国人排斥を主張するデモが頻繁に行われています。そのシュプレヒコールの内容の過激さがヘイトスピーチとして問題になり、各種のメディアや国会でも取り上げられるようになりました。その結果、現在ではそのようなデモが行われる際には、デモ自体を阻止しよう、外国人排斥運動をやめさせよう、という人々も大勢集まるという状況が生まれているのです。


デモ隊に向かって抗議する人々


実際にその現場に足を運んでみて驚いたのは、デモ隊よりもそれを阻止しようという人々の数が圧倒的に多いということです。警察車両に先導されながら通りを進むデモ隊を取り囲むように人々が集まり、口々に「帰れ!帰れ!」と叫んでいます。地鳴りのような“帰れコール”にかき消され、デモ隊のシュプレヒコールはほとんど聞こえません。当初はヘイトスピーチと言われるデモ隊の過激なシュプレヒコールが鳴り響いているのだろうと思っていましたが、実際の状況は全く逆だったのです。

普通の街で突然出現したその光景はなんとも異様でしたが、「まるでネットで起きる炎上状態を、リアルな場で見ているようだ」そう思わされる光景でした。ヘイトスピーチが大久保周辺で行われているという情報が火種になり、大量の人々がそこに押し寄せて口々に非難の言葉を叫ぶその様は、まさにネットの炎上に酷似しています。

もちろん、彼らのほとんどは個々人の政治的、倫理的な考えのもとに集まり、そのような抗議行動に出ているはずです。ただ、これだけ大勢の人が実際にその場に集まり、地鳴りのような“帰れコール”を行っていることの背景には、それだけでは説明のしきれない、根本的な叫びの欲求を感じてしまったのです。


一人でも泣き、叫ぶ

叫びの欲求、その視点で世の中を見渡してみると、他にも思い当たる事象があります。例えば一人カラオケ。カラオケ店に一人で行き、好きなだけ歌ってストレスを解消するという行動は00年代中盤には起こっていました。しかし最近では、一人カラオケ専門店が多数出店されたり、ゲーム機を使って自宅でカラオケができるサービスが登場しており、利用者が拡大してきているようです。


最近話題となっている涙活もまた別の一例かもしれません。日常生活の中に意識的に涙を流す機会を設けることで、固まってしまった感情を解放しようという習慣です。イベントなども開かれているようですが、こちらもカラオケ同様、週末に自宅で一人、涙を流す人が女性を中心に増えているそうです。

ちなみにストレス解消グッズとしても『叫びの壺』という商品が話題です。思いっきり叫んでも、外に漏れる音をささやき声くらいまで小さくしてくれるという壺型のグッズなのですが、このような商品が話題になるのも、やはり感情を思いきりぶちまけたい、という人々の欲求の表れなのではないでしょうか。


叫びの欲求は、踏ん張りの表れ

実は今年の6月に行った調査で、「普段の生活の中で、あなたが今、最も声を大にして叫びたいことをできるだけ赤裸々に書いてください」という質問をしたことがあります。仕事のこと、政治のこと、恋愛のことなど様々な回答が寄せられましたが、最も驚いたのは「特にない」という回答をした人がほとんどいなかったということです。私の感覚値ですが、このような自由回答では、(すぐに思いつかないという人もいるので)少なくても1~2割くらいは「特にない」という回答があるものです。しかし、この質問では「特になし」は1割を下回っており、みんな何かしら叫びたいことを抱えていることが良く分かる調査結果となりました。

叫びの欲求が人々の間で高まっているとしたら、それはなぜなのか?私には、「日本人が今、踏ん張っている」からのように思えます。不況や震災を脱して、ようやく景気回復や復興の兆しが見えてきています。一方でその実感はまだ乏しく、だからこそみんなが「ここが頑張りどころだ」と思っている、それが現在ではないでしょうか。自分を律してしっかりしようと思っている今だからこそ、日頃ため込んだ感情を発露することも求められているのです。泣き叫びながら、前を向く。そんな動きが、生活者の中から生まれようとしています。

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